WASEDA UNIVERSITY
              
 
 

 ダイヤモンドナノ粒子へのDNA固定

(文責: 村上 泰規)

 
 

我々が使用しているダイヤモンドナノ粒子UDD(ultra-dispersed diamond:超分散性ダイヤモンド)は、トリニトロトルエン等の爆薬の混合物を酸素欠如の状態で爆発後、化学処理を行い精製します。その粒子の構造は、中心がダイヤモンドであるsp3カーボンで構成され、その周囲をグラファイトであるsp2カーボンが覆い、さらにその周りにはアモルファス層や多くの官能基が存在するという複雑な構造をとって構成されています。そして表面の電荷による反発で、溶液中では沈殿することなく分散しています。

 

図1 UDDの構造

図2 溶液中でのUDDの様子

 
我々はこのUDDをバイオ応用に向けて研究しています。例えば薬物の体内輸送を制御できるドラッグデリバリーシステムの課題の一つには運搬体の選定が挙げられますが、運搬体材料に対しては、生体適合性、サイズなど多くの制約があります。UDDはダイヤモンドであるため、化学的安定性が高く、生体適合性を有し、サイズにおいてもこの制約を満たすので、運搬体材料として有望な候補になると考えられます。しかし、粒子が数個凝集すると容易に大きくなってしまうので、それを防ぐために分散性を制御することが重要となります。我々はUDD表面の官能基を変化させることで粒子の表面電位を変化させ、分散性を制御しようと試みています。これまでに我々は、UDDの表面に各種処理を行い、蛍光標識付きDNAを固定することに成功しました。しかしDNAを固定するために表面処理を行う際、粒子の分散性が変化し、凝集を起こす問題が生じています。そこでUDDの表面をカルボキシル基で修飾し、KFMによって表面電位を測定したところ、修飾前に比べ、表面の電位に差が現れることを確認しました。この修飾をしたUDDを用いれば、分散性を保ったまま、高密度にDNAを固定することが出来ます。また、表面に様々な官能基を有しているという性質から、表面にDNA以外のものを固定することも可能であると考えられます。

 

図3 蛍光顕微鏡によるDNA固定の確認


図4

 

(a) カルボキシル基修飾前のUDDの表面電位測定結果
(b) カルボキシル基修飾後のUDDの表面電位測定結果