WASEDA UNIVERSITY
              
 
 

 ダイヤモンドナノ粒子へのDNA固定

(文責: 村上 泰規)

 
 

我々はダイヤモンドのナノ粒子について研究しています。
このダイヤモンド粒子は元々ロシアで発見されました。ロシアは爆薬の処理中にこの粒子を発見し、長らく研磨剤としての用途しか見出されていませんでしたが、その粒子を別のことに応用できないか?という発想からこの研究は開始されました。

製造方法

我々が使用しているダイヤモンドナノ粒子UDD(ultra-dispersed diamond:超分散性ダイヤモンド)は、トリニトロトルエン等の爆薬の混合物を酸素欠如の状態で爆発後、化学処理を行い精製します。工業的生産はトリニトロトルエンとRDXの混合物を原料に爆発させると、高温度(3000K以上)高圧力(20Gpa以上)になり、カーボンがダイヤモンド構造に変化します。この爆発により、ダイヤモンド−非ダイヤモンド構造が生成される。その後科学洗浄を行い、UDDクラスターを化学処理、熱処理、高圧処理を行うことで様々な特性を付け加える事が出来ます。

特性

粒子の構造は、中心がダイヤモンドであるsp3カーボンで構成され、その周囲をグラファイトであるsp2カーボンが覆い、さらにその周りにはアモルファス層や多くの官能基が存在するという複雑な構造をとって構成されています。そして表面の電荷による反発で、溶液中では沈殿することなく分散しています。粒子は科学的に安定で、無毒で高い吸着力を兼ね備えています。

 

図1 UDDの構造

 
 

応用

我々はこのUDDをバイオ応用に向けて研究しています。例えば薬物の体内輸送を制御できるドラッグデリバリーシステムの課題の一つには運搬体の選定が挙げられますが、運搬体材料に対しては、生体適合性、サイズなど多くの制約があります。UDDはダイヤモンドであるため、化学的安定性が高く、生体適合性を有し、サイズにおいてもこの制約を満たすので、運搬体材料として有望な候補になると考えられます。しかし、粒子が数個凝集すると容易に大きくなってしまうので、それを防ぐために分散性を制御することが重要となります。我々はUDD表面の官能基を変化させることで粒子の表面電位を変化させ、分散性を制御しようと試みています。
これまでに我々は、UDDの表面に各種処理を行い、表面をカルボキシル基とアミノ基で修飾することで、粒子の表面電位が変化して、分散性が変わることを確認しました。また、粒子の表面にあるカルボキシル基、アミノ基を用いて、蛍光標識付きDNAを固定することに成功しました。

 

図3 蛍光顕微鏡によるDNA固定の確認

 
DNA固定は蛍光顕微鏡で観察しました。蛍光顕微鏡での観察の結果は、UDDのみでは、当然なにも確認できず、蛍光標識付きDNAのみでも、スケール的に確認することができません。しかしUDDにDNAを固定した後では光を確認することができます。これは、DNAが高密度でUDDに固定されたことで、小さな光が多く集まって大きな光となって観察することができたと考えられます。
 

 
今後は各種修飾、様々な物質の固定のほか、生体適合性の調査も行っていきたいと考えています。