WASEDA UNIVERSITY
              
 
 

電気二重層キャパシタへの応用

 

電気二重層の概略図

電気二重層キャパシタとは

電気二重層キャパシタ(Electrical double-layer capacitor: EDLC)とは、電気二重層という現象を利用した蓄電デバイスです。電気二重層とは、電解液に導体を浸すと電解液が導体に接する界面に溶媒1分子が並ぶほどの薄い層が生じ、その外側の電解液に拡散層が広がる現象です。つまり、左図に示すように陰極・陽極それぞれで電子と陽イオン・正孔と陰イオンが向かい合った層が生じます。この層は正電荷と負電荷が向かい合ったキャパシタとみなす事ができるため、蓄電デバイスとしての応用が可能です。この正負の電荷の層の厚さは数nmしかありません。キャパシタの容量は、その厚さに反比例するので、一般的なアルミ電解コンデンサの1000倍もの容量を持っています。鉛蓄電池等の一般的な2次電池と比較すると容量では劣りますが、サイクル寿命が長い、急速充放電が可能、充放電効率がよい、地球環境にやさしい等の利点があります。

カーボンナノチューブの電気二重層キャパシタ電極への応用

電気二重層は電極の表面に形成されるので、電極の表面積が大きければそれだけ多くの電荷を蓄積することができ容量が大きくなります。そのため、電気二重層キャパシタの電極には活性炭などの表面積が大きなものが使用されています。そして、その電極として新たに注目されているのがカーボンナノチューブです。カーボンナノチューブは直径がナノメートルサイズのチューブ構造を持つために表面積も大きく、活性炭と比較しても、導電性が良くなる、理論上はより表面積を大きくすることができる、表面に存在する官能基が少なく特性が安定化するといったような特徴があると期待されています。さらに、カーボンナノチューブ先端のフラーレン状のキャップを外してやることで内壁も利用して表面積を倍増することができるのではないかと言われています。

このカーボンナノチューブ電極を作成する方法は主に2つあり、1つは単体のカーボンナノチューブをバインダーで金属上に固める方法で、もう一つは金属上に直接カーボンナノチューブを成長させて電極とする方法です。川原田研究室では、企業の方と協力して後者の方法でカーボンナノチューブ電極を作成し、評価しています。

 

カーボンナノチューブ電極の断面図

EDLC電極に適した表面積の大きい構造であることが分かる。

 

論文

Takayuki Iwasaki, Tasuku Maki, Daisuke Yokoyama, Hironori Kumagai, Yasuhiro Hashimoto, Takuma Asari, Hiroshi Kawarada. Phys. Stat. sol. (RRL) 2, No.2, 53-55 (2008)