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解説: カーボンナノチューブとは

 

カーボンナノチューブとは?

カーボンナノチューブ(CNT)とは、名前の通り、炭素(カーボン)でできた直径数「ナノ」メートルのチューブ(筒)です。ナノメートルとは、10の-9乗メートルという非常に小さな値です。人間の髪の毛が直径約10マイクロメートル(10の-5乗メートル)ですから、その10000分の1という細さです。この炭素でできたチューブは、今や、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレンと並び、炭素の同素体として高校の化学の教科書に取り上げられるほど注目されている物質です。カーボンナノチューブはグラファイトシートを筒状に丸めた形になります。実は、カーボンナノチューブ誕生の前にフラーレンという物質が発見されています。フラーレンは炭素でできたサッカーボールとイメージして頂ければ良いでしょう。12個の五角形と20個の六角形の交差する部分に炭素原子を一つずつ配置させた、計60個の炭素原子からなる分子構造をしています。フラーレンやカーボンナノチューブは電子顕微鏡観察によって発見され、まさにナノテクノロジーを代表する物質となっています。

カーボンナノチューブの性質

カーボンナノチューブは、構造を見ると図1の(a)、(b)が示すように2種類のタイプがあります。それぞれ単層カーボンナノチューブ(Single-walled carbon nanotubes)、多層カーボンナノチューブ(Multi-walled carbon nanotubes)と呼びます。前者は一枚のグラファイトシートが丸まってチューブになっているもので、後者はそれが入れ子状に何層も重なっており直径はそれぞれ1~3nm、4~数十nmと違いが見られます。さらに、ナノチューブは螺旋構造を取っておりグラファイトシートの巻き方(カイラリティ)によって性質が変わります。そのカイラリティの違いでナノチューブの電子構造が変わり、金属や半導体になります。さらに熱的に安定で、軽く、強い炭素結合を持つことからプローブ顕微鏡の針や電界放出ディスプレイ、電界効果トランジスタ(FET)、配線技術などの様々な応用が期待されています。